第2章 家族の絆ー中編ー
桜たちは今、鬼と戦っている。正確には炭治郎と禰󠄀豆子が、だが。なぜ今いる屋敷が戦場となってしまったのか、それは少し前に遡る。
鬼に案内されて着いて行った先には大きな屋敷があり、そこで珠世という鬼の医者と出会った。案内をしてくれた鬼は愈史郎と言うらしい。
珠世さんは鬼舞辻無惨を恨んでおり、彼を抹殺したいと思っているとか。また、禰󠄀豆子を人間に戻すための薬もあるはずだから、研究して作ると炭治郎に約束してくれた。
そのためには幾つかの条件があったが。
一つは禰󠄀豆子の血を調べさせてほしいこと、そしてもう一つは鬼舞辻無惨に近い鬼の血を採取して欲しいこと。
禰󠄀豆子を人間に戻すためだ。炭治郎は嫌な顔一つせず、しっかりと頷いていた。
主に珠世と炭治郎の二人が話をしており、邪魔はしてはいけない内容だと思った為、桜は空気と化していた。愈史郎は偶に炭治郎にちょっかい出していたが。
話も終わったので、少し休ませてもらってから移動しようと口を開きかけた時だった。
「伏せろ!」
愈史郎が珠世を庇いながら大声で叫ぶと同時に、強い衝撃で屋敷の壁が破壊された。破壊された壁の外を見ると、二体の鬼の気配がする。
炭治郎を追って現れたのは、手毬の鬼と矢印の鬼だった。
そして冒頭へと戻る。
「おい、お前!あいつらは戦っているが、お前は戦わないのか?」
お前も鬼狩りだろ?と睨んでくるのは、珠世大好き愈史郎だ。
「んー…、危なくなったら助けるつもりではいるけど……」
チラリと炭治郎の方を見ると、矢印の鬼相手に少し苦戦しているようだ。ニコッと笑いながら愈史郎の方に顔をむける。
「炭治郎くんならきっと大丈夫。それに、この程度の鬼に勝てなかったら十二鬼月を倒すなんて夢のまた夢よね」
「…お前」
「……あなたは、あの鬼たちが十二鬼月ではないと仰るのですね」
「はい。十二鬼月が…この程度のはずがない」
珠世さんもそうお考えなのでは?と聞くと、困ったように笑って「そうですね」と同意してくれた。
「あなたはその辺の鬼殺隊士とは違いますね。……柱、なのでしょうか」
疑問ではなく確信。そして柱が炭治郎と一緒にいる理由も何となく予想できる。
監視
心優しい炭治郎はそれに気付いてないのだろう。