第2章 家族の絆ー中編ー
炭治郎とも無事合流できたので、この後はどうしようかと考えていると、遠慮がちに「この後行くところがあるんです」と言ってきた。
「そうなの?じゃあ行きましょう」
「いえ、あの…その……いいんですか?」
炭治郎は自分の用事に付き合わせてしまうことに気まずそうにしている。…優しい子だ。しかし、桜とてこれは任務なので選択肢は“共に行く”という選択肢しかない。
「鴉から君と行動するように言われてるから特に問題ないよ」と安心させるように伝える。
「……それとも、私が一緒に行くと何か問題があるのかな?」
にっこりと笑ってはいるが、雰囲気が少し怖い。隠し事は許さないとでも言われているようだった。
「い、いえ、大丈夫です!ちゃんと伝えてありますので!」
「そう、良かったわ」
炭治郎は、ふう…と一息ついてから、匂いを頼りに足を進めた。チラッと桜を見ると、先ほどの怖い雰囲気は少しも無く、ニコニコとしながら付いてきてくれている。
艶のある黒髪は背中まであり、上半分を蝶の飾りで留めている。顔は可愛いと言うより綺麗な人だ。実力はまだ分からないが、階級は間違いなく自分より上だろう、と炭治郎は一人百面相をしていた。
その顔が面白くて、桜は思わずプッと笑ってしまう。
そんな時だった。前方に人影が映る。気配からして鬼だ。
「あ、待っててくれたのですか」
そしてその鬼に何の戸惑いもなく声をかける炭治郎。
…ああ、これはまた特殊な任務になりそうだ、と心の中で呟き溜息をついた。
炭治郎を待っていた鬼は桜と禰󠄀豆子を見て怪訝そうな顔をした後、醜女発言をした。
炭治郎は醜女発言にキレて、鬼に禰󠄀豆子の可愛さをこれでもかと言うくらい説明している。
「………醜女、かぁ」
そして桜も地味に落ち込んでいた。先刻遭遇した鬼にも、腐った肉と言われたなぁ、と。
そんな桜など気にも止めず、鬼は「着いてこい」と先を行ってしまった。
「桜さん、行きましょう!」
君も私が醜女と言うことにはなにも触れないのね…といじけていると、「桜さんは誰が見ても綺麗ですよ!」と付け加えてくれたので、少しだけ心が軽くなる。
炭治郎はやっぱり優しい子だった。