第2章 家族の絆ー中編ー
「可愛いんですけど…!」
首を傾げたままこちらを見ている禰󠄀豆子に、ぎゅーっと抱きついた。禰󠄀豆子も嬉しかったようで、ホクホク顔で「ムムー!」と抱きついてくれる。
「私もこんな妹が欲しいわ」
千寿郎も可愛いが、きっと桜が抱きついても、禰󠄀豆子みたいに抱き返してくれることはない。むしろ、「あ、あああ姉上ぇっ!」と顔を真っ赤にして慌てふためきそうだ。
……それはそれで可愛いのだが。
ぎゅーっと抱きしめ合っていると、背後に人の気配がした。振り返ればそこにいたのは屋台の主人。気のせいか額には青筋が立っている。…何故?
「お前らー!うどん、食うのか食わねえのかどっちだ?!」
「っていうか、そっちの女は食うつもりねぇだろ!」と凄い形相で禰󠄀豆子を指差して叫んでいる。
…ごめんなさい、決して冷やかしではないんです。
「金なんかどうでも良いが、それよりも俺の自慢のうどんが食えねぇってか!」
「コイツの連れは俺の作った山かけうどんを落としてどっか行っちまいやがったしよ!」と終いには叫びながら泣き出した。
「…これぞ男泣き」
「ムム〜!」
いや、違うだろ!と、この場に誰かいたらツッコミを入れてくれただろうが、残念ながらそんな人物はいなかった。
そして、戻ってきた炭治郎が泣いてる店主とそれを見守る二人の姿を見て、なんだこの光景…と若干引いていた。
浅草で何か食べようと言う約束通り、この露店で主人自慢の山かけうどんを食べてお腹が満たされたところで炭治郎にどこに行っていたのか問いかけた。
「急に居なくなってすみません。実は鬼舞辻無惨に会いまして……」
「見失ったのはまぁ…私の責任だから気にしないで」
柱として不甲斐ないのだけれども。
「それより知り合いの人?鬼舞辻無惨って…」
……ん?ちょっと待って。
鬼 舞 辻 無 惨 ?!
「は?!あの鬼舞辻無惨?!」
聞き間違いかと思ったが、どうやらそうではないようだ。
「この浅草にいたの?」
「…はい。匂いがしたので、その跡を追ったらいました」
逃げられましたけど…、と悔しそうにしていたが、そう言う問題ではない。柱たちでさえ誰も鬼舞辻に遭遇したことはないのだ。
やはり目を離すべきではなかった、と悔やんだが、過ぎたことは仕方がない。
「…取り敢えず君が無事で本当に良かった」