第2章 家族の絆ー中編ー
「次ハ浅草ァ、鬼が潜ンデイルトノ噂アリ!浅草ニ向カエー!」
カァ、と鴉が言うと、炭治郎は「休みなしでいくのか?!少し休ませてくれ!」とお願いした。そんな炭治郎に「行クノヨ!」と言い返す。
「炭治郎、鬼殺隊は人手不足だから仕方ないのよ。行きましょう」
「はい……」
ううう…、と疲れきった表情で浅草へと向かう炭治郎を見て、クスッと笑ってしまう。
「浅草についたら何か食べようか」
「え、いいんですか?!」
沈んでいたはずの表情が、一気にぱあっと明るくなる。
「うん。無事初任務達成したことだし、お腹を満たしてから次の任務頑張りましょう」
「はいっ」
*****
「街はこんなに発展してるのか?!夜がこんなに明るい…!」
炭治郎は浅草の雰囲気に呆然としながらも、キョロキョロと辺りを見回している。
「建物高っ!!」
まさに田舎者丸出しである。ある意味良いカモだ。
そんな炭治郎の様子を桜はニコニコと面白そうに後ろから見ていた。
禰󠄀豆子と手を繋ぎながら歩く姿は可愛い。禰󠄀豆子が鬼でなければ兄妹仲良くこの浅草を楽しめたはずなのに。
世の中とは時に残酷だ。なんの罪もない人たちが鬼の犠牲となっていく。
ふう、と溜息をつくと、二人は脇道に入っていった。この雰囲気に疲れたのだろう。後を追うように脇道に入ろうとすると、炭治郎が焦ったような声で「失礼しました!!」と叫び、走って逃げていく。
「え、炭治郎くん…?」
どうしたのだろう、と脇道を覗いてみると、そこには仲睦まじい男女が抱き合って口づけをしていた。
「………お盛んなことで」
ここでそれ以上のことはするなよ、と心の中で呟き、桜もその場を後にした。
「……やってしまった」
右を見ても人、左を見ても人。上を見て…前を向く。この人混みの中、炭治郎たちから目を話したのは桜の落ち度だ。
人混みに呑まれそうになっていた炭治郎のことだ。きっと人混みから外れた場所にいるに違いない。
自分の勘を頼りに足を進めていると、街外れにある屋台に禰󠄀豆子がいた。
……ん?禰󠄀豆子ちゃんだけ??
「禰󠄀豆子ちゃん、炭治郎くんは?」
「ムム?」
目線を合わせて首を傾げながら聞くと、禰󠄀豆子も同じく首を傾げた。