第2章 家族の絆ー中編ー
日が沈んだ頃、北西の町に到着した。
どこにいるかなー?と気配を探ると、ある一点に鬼の気配があった。人の気配もあるため、そこへ足を運ぶと鬼と戦う少年がいた。
「貴様ー!邪魔をするな!女はなぁ、十六を過ぎると鮮度が落ちるんだ!段々と不味くなるんだよ!」
鬼が何やら叫んでいる。あの鬼は、気を失っている少女を狙っていると見て間違いないのだろう。
青年と少女を守りながら三体の鬼と戦う少年。彼はこれが初任務のはずだ。いざとなったら手助けしよう、と暫く屋根上から隠れて様子を見ていると、少年を守るように箱の中から鬼が飛び出してきた。
鬼の少女は、青年と少女の頭を撫でた後、鬼に向かって攻撃をする。人間を守るために鬼と戦い始めたのだ。
「…信じられない」
目を見開き、驚いた表情で戦いを見つめる桜。
正直、半信半疑だった。お館様や鱗滝さんの話を聞いていたとはいえ、心のどこかでは信じていなかった。
「禰󠄀豆子、俺は下に行く!二人を守ってくれ!」
できるな?と問いかけると鬼の少女は頷く。そして少年は沼の中へと入っていった。
その後も鬼と鬼の少女は戦い続けるが、額に傷を受けてしまう。助けに行くべきか、と思ったとき、沼から少年が飛び出てきた。そして戦いながら鬼舞辻無惨のことを聞くも、情報が得られないと分かると頸を斬った。
初任務終了かな、と思っていると、鬼を倒して安心しきっている彼らの足元に大きな沼が現れた。…一体仕留め損ねたらしい。
それに気づいた少年は驚いた表情で鬼を見ていた。
「…こんばんは。十六歳になる前の女の子ってそんなに美味なんですか?」
鬼の背後に立ち、耳元でそっと囁いた。
「!!」
驚いた鬼は、桜から距離をとる。そしてガタガタと震えながら大声で叫んだ。
「そうだ!そしてそこの女は今も徐々に鮮度が落ちている!早く食べないといけないんだ!!」
邪魔をするな、とでも言うよにガチガチと歯軋りをする。そして人差し指を桜に向け、尚も大声で叫ぶ。
「お前は不味そうだ!鮮度なんて言葉は存在しない!!腐った肉だ!!」
「何て事を言うんだ!!」と、その場にいた少年と青年が心の中で叫んだ瞬間、目の前で頸が吹き飛んで鬼は消滅した。
倒したのは額に青筋を立てた桜だ。
…女は怒らせてはいけない。