第2章 家族の絆ー中編ー
「…誤解を招くような言い方しないでくれる?」
「む?」
みんなの前で、それもクソデカい声で“俺の胸を触るといい!”と言ったのだ。
周りをよく見てほしい。みんなドン引きだ!
「きゃー!煉獄さんったら、不死川さんに嫉妬したのね。これって三角関係?!」
…………あ、若干一名違った。
ドン引きどころかキュンキュンしてる。流石恋柱だ。
「ねぇ伊黒さん!私、煉獄さんと不死川さん、どちらを応援すればいいのかしら」
隣にいた伊黒に話をふるが、問われた側は答えに困る。そもそも桜と杏寿郎は双子なわけで……。
「甘露寺、煉獄と桜は姉弟だ。恋愛の対象にはならないだろう」
他ならぬ甘露寺の問いかけを無視することはできない。どうしたものかと考えた結果出てきた言葉だった。しかし、甘露寺はその斜め上をいく人間だ。
「きゃーっ!それって…禁断の恋ね!!」
「麗しの姉弟愛…ステキ!」と残念ながら甘露寺の暴走を止めることはできなかった。
「……師が師なら、弟子も弟子だな」
誰かがポツリと呟いた。
*****
あの後、お館様の登場により話は終了した。
そして柱合会議も終わり、皆が解散する中、桜はお館様に呼ばれて別室で二人で話をしている。
「桜。君に頼みたいことがあるんだ」
「はい、お館様」
「…鬼を連れた隊士がいる。先日、最終選別を突破した子だ」
「……鬼を、連れた…」
お館様の話では、鬼はその隊士の妹で、二年経った今でも誰一人人間の血肉を食べていないと言う。
俄に信じられない話だが、お館様が言うのだから間違いないのだろう。
その隊士と共に行動し、二人を見守ってほしい。そうお願いされた。…言い方を変えれば見張り役だ。
なぜ他の柱ではなく私なのだろうか、と疑問に思っていると、お館様は「桜が一番適任なんだよ」と言った。
「お願いできるかな」
「…御意」
そして、後に合流することになるであろう二人の新人隊士のことも宜しくね、とまで言われてしまった。…あの優しい声で。
今回の任務は新人隊士の育成も兼ねているのだろう。マジかぁ…と頭を抱えながら一人呟いた。