第2章 家族の絆ー中編ー
鬼殺隊本部、産屋敷邸。
そこで半年に一度の柱合会議が行われる。
あれからまた数年の月日が流れた。
現在、柱は十人いる。本来なら九名なのだが、折角の逸材を甲で置いておくのは惜しいとのお館様のご意向で、特例で十名となっているのだ。
桜も柱の一人で、十二鬼月を倒して“光柱”に昇進している。
桜は柱合会議に参席するため産屋敷邸へと来たのだが、どうやら少し早く着きすぎたようだ。まだ他の柱たちは来ていない。
空を見上げると青空が広がっていて、雲がゆっくり泳いでいる。そっと目を閉じれば風がそよそよと吹いていて気持ちが良い。このまま寝たら良い夢が見れそうだ。
「…こんな所で立ったまま寝るなァ」
声がしたと同時に、頭にポンッと手が置かれる。そしてわしゃわしゃと撫でられた。
…髪が乱れるじゃないか。
そっと目を開けると、そこには視界いっぱいに“殺”の文字……ではなく、はだけだ胸元が。
「……一気に目が覚めたわ」
立派な胸板なんだもの。
鼻血が出たらどうしよう、と目線を逸らして片手で鼻を押さえる。ちょっと触ってみたいけど、そんなことしたら私は変態になってしまう。
そして気づいた。いつの間にか柱が揃っていることに。
「立ったまま寝るとか、器用ですねぇ」
冨岡さんみたいですよ、と笑いながら言うしのぶ。そんなしのぶを心外だと言う目で見る冨岡義勇。この二人、一見仲が悪そうに見えるが、実はそうでもない。
二人のやり取りを見守りつつ、目線を戻した。
「…さねみんのその胸板、触っていい?」
変態と思われるのは嫌だが、触ってみたいのだから仕方がない。
「ァ"ア"?」
桜の言葉に、ギロッとこちらを睨む。血走った目がちょっと怖いけど…、実際一般隊士から怖がられているけれど本当は優しい人なのだ。
「“さねみん”はやめろォ」
ほら、胸板を触っていいか聞いても怒らない。
……………………………………。
…………………………………ん?
ちょっと待って、気になるのはそこなのか。
頬をほんのり赤く染めて、人差し指でポリポリと掻く姿が意外にも可愛くて、思わず笑みが漏れる。
そんな二人のやり取りを見ていた杏寿郎が、「不死川のではなく、俺の胸を触るといい!」とクソデカボイスで言ってきたので、ドン引きした。