第1章 家族の絆ー前編ー
「ここで会ったのも何かの縁よね!」
先ほどの鬼を思い出し身震いしていると、うふふ、と笑いながら手を握ってきた。
「鬼殺隊って女の子少ないから寂しかったの。歳も近そうだし、私と仲良くしてくれるかしら?」
ニコニコと笑顔を絶やさない彼女は、「勿論仲良くしてくれるわよね〜?」という雰囲気を出して、こちらに拒否権を与えるつもりはなさそうだ。まあ拒否するつもりもないのだが。
「私は胡蝶カナエと言います。貴女は?」
「煉獄桜です。…よろしくね」
手を差し出すと、目の前の少女…胡蝶カナエは、目をパチパチして驚いた表情をした。桜から握手をしてくるとは思っていなかったのだろう。
カナエは頬をほんのり赤く染めて「よろしくね!」と嬉しそうに言った。
一緒に帰路につく途中、お互いの話をした。歳はカナエが一つ上だと言うこと、医学の知識がある事、…そして家族のことなど。
カナエは両親を鬼に殺され、鬼殺隊に入ったらしい。そして妹も鬼殺隊を目指しているのだとか。…ただ、体が小さいため、鬼の首が切れないのが課題となっているらしい。
桜自身も体は小さい方で力も弱い為、カナエの妹の気持ちがよく分かる。そして話を聞く限り、カナエの妹とも良き友人となりそうだ。
「桜ちゃんはどうして鬼殺隊に?」
「私の家は代々鬼狩りだから、かな」
「そうなの?じゃあご両親も鬼殺隊に?」
「母は違うけど、父は鬼殺隊だよ」
「凄いわね〜!あ、煉獄ってもしかして…お父様は炎柱の煉獄様、なのかしら?」
カナエの言葉に、困ったように頷くことしかできなかった。カナエも何かを察したようで、それ以上のことを聞いてくることもなかった。…炎柱の現状は、隊士たちの間では噂になっている。カナエの耳にも届いているのだろう。…暴言を吐いたり、任務にお酒が手放せなくなっていることを。
「ねえ桜ちゃん。困ったことがあったら、いつでも頼ってくれて良いからね」
桜の手を両手でギュッと握り、真剣な目で話すカナエ。そんな彼女の優しさに、近いうちに感謝することになる。
そして二人の出会いは、偶然などではなく必然だったのかもしれない。