第1章 家族の絆ー前編ー
“光の呼吸、壱の型、電光石火!”
桜は今、自分が使った呼吸を思い出していた。
炎の呼吸の力強い技に、雷の呼吸のような素早い技を足して二で割ったような感じの呼吸…光の呼吸を。
「(見つけた、私の呼吸)」
炎の呼吸を極めることはできなかったけれど、炎の呼吸から派生させた光の呼吸を極めていけばいい。それに自分にはこの呼吸が合っていると思われる。
桜は自分の日輪刀の色を再度確認する。…鳥の子色。
炎の呼吸を基に、でも雷の呼吸にも近い光の呼吸。自分の刀はまさに赤が入り混ざった淡い黄色。炎と雷、両方の色が淡いながらも混ざっている。
光を連想させる、自分だけの色だ。
光の呼吸はまだ壱の型しかないけれど、鬼を倒しながら少しずつ新しい技を編み出していけばいいのだから、課題は多いけれども問題はない。それ以上に、自分の呼吸を見つけることができて嬉しかった。
「杏寿郎に報告しなくちゃ」
フフッと笑うその顔は、月明かりに照らされて綺麗だった。
新たな目標を胸に、初任務を終えた桜は帰路につこうとした時だった。後ろから不意に声がかけられた。
「お疲れ様〜」
振り向くとそこには、蝶の髪飾りを付けた同じ年頃の女の子がニコニコと笑顔で立っていた。
隊服を着ており、腰には日輪刀。間違いなく鬼殺隊の人だ。
「偶々通りかかったら貴女がいて、苦戦しているようだったから助太刀しようかなーって思ったんだけれど…問題なく倒せたようで良かったわ〜」
両手を右頬の横で組んで、にっこりと花を飛ばしながら話す少女。一体いつから見ていたのだろうか、あのやり取りを。
「とーっても面白かったの!鬼とあんな風にお話しするなんて思わなくて」
うふふ、と笑顔を絶やすことなく話し続ける。
「まあ、あの鬼はちょっと特殊だった気もするけれど。他の隊員だとあんな風にお話しすることもないでしょうし…面白いものが見れて良かったわ」
「………………………」
…何だこの人、私は全然面白くなかったんですけど。むしろ気持ち悪かった。あの顔は思い出しただけで寒気がする。
………最期はそうでもなかったけれど。