第1章 家族の絆ー前編ー
「残念だナァ、オマエの攻撃は俺に当たらない」
「……っ!」
「素速い俺、カッコいい?」
「キモチワルイ。…カオが」
「この顔は生まれつきだ、チクショー!」
え、そうなの?それってある意味怖いんですけど!こんなのが生まれてくるとか…お母さんが可哀想すぎる。私だったら嫌だ!
「それよりオマエ!何で俺の攻撃が当たらないんだ!」
敵の攻撃が当たらない理由。それは、桜も変態鬼同様素速いからだ。速さは申し分無いのだが、技を出す時どうしても少し遅れてしまうため、敵に逃げられてしまうのだ。
「チクショー!すばしっこい奴め!!」
技を出しては避けられ、攻撃されれば避ける、の繰り返しである。このままでは体力が大幅に削られてしまう。何とかしなければ、と考える。
最終選別のときに雷の呼吸を使う剣士の技を見たことがあり、とても素速い一撃だったのを覚えている。炎の呼吸はどちらかと言えば力重視の技に近い。
桜は小柄なので力技は得意としない。なので炎の呼吸は合わないのだ。それを理解していたからこそ、素早さを磨き上げた。そして素早さを付け足すことで攻撃力を上げていたのだ。
………トクン
心臓の音が鳴る。
何故だろう、今ならあの変態鬼を倒せる気がした。
方向転換し、変態鬼の方へと走り出す。桜は日輪刀を持つ手に力をいれた。すると日輪刀からフワッと優しい淡い光が舞う。
「光の呼吸、壱の型、電光石火!」
言葉と同時に優しく淡い光が一変、眩く激しい光となり、今までの攻撃とは比べ物にならないくらいの速さで鬼の首を斬った。
「なっ…!」
鬼は、まるで信じられないとでも言うかのように首を斬られて驚いている。
「可愛い女の子たちを食べたのだから、罪は償ってね」
「……俺の娘はよォ、十二才だったんだ。でも、俺が喰っちまった。気づいたら喰ってたんだ。それからずっと…娘と同じ年頃の子を無意識に探し求めていたんだ」
ポロポロと塵のように崩れていく中、人間の記憶を思い出したようで涙する。
「大切な娘、だったのによォ……。何でこんなことになっちまったんだ。…すまない、…すま、ない」
変態鬼も最期は普通に戻り謝って消えていった。
「…大切な娘、か」
自分の父はどうなのだろう、と考えるも、思い浮かべるのは飲んでは寝てを繰り返す残念な姿だった。