第1章 家族の絆ー前編ー
隊服事件の翌日、無事に日輪等が届いた。桜の刀を打ってくれたのは鋼鐡塚さんと言う、これまた特殊な人だった。「煉獄家の者は皆炎刀だ、お前も綺麗な赤に染めろ」と顔を近づけて興奮気味に言ってくるものだから若干引いた。
「早く刀を抜け!」と急かすものだから勢いよく刀を抜いたら、桜の刀は少しづつ赤色…ではなく、赤みがかったごく淡い黄色、鳥の子色に染まった。
「なっ…!俺は真っ赤に染まった綺麗な炎刀が見たかったのに!!」
キイィィィ!!と鋼鐡塚さんは怒り狂い出したので、「そんなに炎刀が見たいなら、杏寿郎の刀を見せてもらっては?」と言ったら「俺は俺の打った刀が赤く染まるのを見たかったんだ!」とキレられた。
正直、赤に染まってくれなくて…杏寿郎とお揃いにならなくて悲しかった。隣で黙って見ていた杏寿郎は、私に失望しただろうか。でも、自分の中で何となく赤には染まらないというそんな予感はしていたのだ。
「(……鳥の子色、か)」
やはり私は炎の呼吸ではなく、別の呼吸を極めるべきなのだろう。それでも、ほんの少しとはいえ赤が入っていることに嬉しさを感じたのも事実。
日々の訓練と任務をこなしながら新しい呼吸を見つけてみよう。
決して簡単なことではないけれど、母と交わした約束を守るため、私はもっともっと強くならないといけないのだから。
チラッと杏寿郎を見ると、桜の日輪刀を見て何か考え込んでいるようだ。
この先、私が力で杏寿郎を超える事は絶対に無いだろう。だから、私は私のやり方で杏寿郎に追いつこうと密かに決心した。