第4章 ご都合血気術
胡蝶の目的は桜。鎹鴉からの報告で桜が血気術を浴びたからすぐにきて欲しいと伝達がきたらしい。
「すみません、俺が鬼を倒せなかったせいで桜様が血気術を……」
「仕方ないですよ。桜さんにも落ち度はありますので、村田さんだけのせいではありません」
優しく言ってはくれているが、二人の注意不足が原因だと言われているようなものだ。
「桜さんも、血気術を放とうとしている鬼の前に飛び出してはいけませんよ」
「はーい!」
しのぶは桜の目線に合わせて言うと、元気に手をあげて返事をしてくれたところまでは良いのだが、「けっきじゅちゅってなあに?」と首を傾げて聞いてきた。
その瞬間、しのぶと村田、そして側にいた隠までもが衝撃を受けた。
元々可愛らしい人ではあったのだが、幼くなったことで可愛さが増し増しになったのだ。
「これは…、このまま桜さんを煉獄さんのところへ連れて帰るのは危険のような気がしますね」
しのぶの呟きに、村田も隠も肯定するかのように縦にブンブンと首を振る。
「まあでも煉獄さんの反応も見たいですし、連れて帰りましょう。血気術をかけた鬼は倒されたのですから、一日…遅くても二日経てば元の体に戻るでしょう」
そう言ってしのぶは桜を抱っこして煉獄家へ向かおうとした時だった。振り返り綺麗な笑顔で爆弾を放った。
「何故このようなことになったのか、煉獄さんに村田さんの口からちゃーんと分かりやすく説明してあげて下さいね」
逃げ道は絶たれた。
このまま胡蝶様に任せてしまいたいと心の奥で願ったのだが、どうやら無理のようだ。
村田はトホホ、と肩を落とし、そしてしのぶの後を追いかけたのだった。