第2章 これからどうしよう
「ただいま…。」
私は自分の家の玄関をガラガラと開ける。
「…あらエニシ、おかえりなさい。随分早かったわねぇ。ちゃんと修行出来たの?」
アカデミーに入ってから、こんな風に修行の事をせっつかれる事が多くなった。
「木から落ちて頭打ったから、兄ちゃんが帰れって。」
とりあえず、正当な理由を引き合いにお母さんの催促を躱そうと試みた。
案の定、お母さんの目が見開かれ、心配そうに私に駆け寄って来た。
「大丈夫なの?頭のどこを打ったの?まだ痛む?」
これはこれで少し面倒だけど、せっつかれるよりはいい。
「大丈夫、もうどこも痛くないから。それよりお腹すいちゃった。おやつある?」
私がけろりと言うと、お母さんは、まったくもう、とため息をついた。
「ホットケーキならあるわよ。ちょっと待ってて。」
「はぁ〜い。」
私が答えると、お母さんは台所に戻って行った。
この光景を見るのはあと何回になるんだろう。
ふと、そんな言葉が頭をよぎった。
私はぶるぶると頭を振って、不吉な考えを打ち消す。
大丈夫。まだ時間はある。
何か…、何か出来ることはある筈。
私は、自分の部屋に行き、新しいノートと鉛筆を取り出した。