第5章 春はやっぱり桜だね
うーん…、やっぱ言わない方が良かったかな…。
とりあえず、可能性が低いよって事だけでも伝えなきゃ。
「仮にイタチの言ってたことが本当だとして、争いが嫌いな人が友達を殺す場面ってどんな場面?って思わない?」
兄ちゃんは、それを聞いて一度目線を上げた。
次いで、難しい顔をして腕を組む。
「…襲われた?」
ふむふむ。
「…で、返り討ち?正当防衛?」
「それしかないんじゃないか?」
まぁ、それでいいや。
「ほら、考えづらい場面だと思わない?イタチは品行方正で、襲われる様な人じゃないし。
兄ちゃんが友達だったとして、兄ちゃんがイタチを襲う事なんてまず無いし。」
私がぱっと笑うと、兄ちゃんは少し困った様な顔をして、頬を掻いた。
「ね?ないよ、ないない。あり得ないって。そんな事起こる訳ない。ごめんね、変な事言って。」
私がそう言うと、兄ちゃんは苦笑して私の頭を撫でた。
「はあぁー…。」
お風呂に浸かりながらぼんやりと天井を見上げた。
あれから、イタチの事を思い出そうとしても、思い出す事は出来なかった。
「…う〜んん…。」
頭を掻きむしる。
でもなぁ。そんな殺し合いの描写あったっけ?
それともさらっと流された?
なんか、大事な事のような気がしてもやもやする。