第5章 春はやっぱり桜だね
夕方、空の色が変わりすっかり暗くなった頃、兄ちゃんが帰って来た。
「エニシ、お前学校で何かやっかまれてるって本当か?」
そして、早々に神妙な顔つきで問いかけられた。
「まぁそうだね。同級生から月一でね。そんなことより…」
「お前何でそれを兄ちゃんに言わないんだ。」
…あれ?怒られてる?
「昼間校庭で喧嘩してたって言うじゃないか。イタチから聞いたぞ。」
兄ちゃんは顔を顰めた。
っていうか、イタチいたのね。
見られたくないとこ見られたなぁ…。
「いや〜…、ねぇ?大したことないし。言う程の事でもないかと…。」
とりあえず、誤魔化してみる。
「うちはは今難しい立場にあるんだ。知ってるだろ?喧嘩一つでも問題になる事だってあるんだぞ?」
兄ちゃんは腕を組んで私を半眼で見る。
言わなかった事が相当ご立腹らしい。
「う〜ん…、知ってはいるけどね。果たし状出された以上、向こうからのちょっかいだし?」
「そうだろうな。お前が喧嘩売る事はないだろうさ。だけど、それをちゃんと周りに言え。」
「…すんません…。」
素直に謝ると、兄ちゃんは大きくため息をついた。