第5章 春はやっぱり桜だね
入学式翌日の放課後。
イタチが帰り支度を終えて玄関に向かうと、校庭の真ん中にエニシが立っていた。
何をしているんだろう、と見ていると、
「よく来たな!」
エニシの反対側から声が聞こえた。
視線をそちらに移すと、数人の少年達が立っている。
一対多数という状況に、イタチは眉を顰めた。
危なくなった時には手を貸そうと思い、様子を見ることにする。
すると、相手方の一人がエニシに文句を言おうとしたが、彼女のひと睨みで押し黙ってしまった。
そのことから、どうもエニシの立場が不利という訳ではなさそうだ。
「お、やってるやってる。」
「間に合ったぁ…。」
「まだ始まったばっかだよね?」
ちらほらと人が集まりだした。
まるで、あの集まりが何なのか知っている風な口ぶりに、イタチは内心首を傾げた。
暫く様子を見ると、
「今日は忍組手で勝負だ!」
という声が聞こえてきた。
“今日は”と言うことは”前回”があったということだ。
そして、少年が息巻いているところを見ると、前回はエニシが勝ったのだろう。