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もう一度、を叶えるために。first

第19章 お別れと始まり





エニシの咆哮にも似た慟哭に、吸い寄せられるように一人、二人と根が現れる。
彼らは彼女を囲うように陣形を取りながら、それぞれが印を構え、クナイを構えた。

「情けない。瞬身と言えど、大したことはなかったな。」

「ダンゾウ様にかかれば、うちは一族も赤子同然だ。」

聞かせるように紡がれる声には、悪意とも取れるような残酷な言葉が連なっていた。
だが、エニシには聞こえていないのか、シスイの名を呼びながら泣き叫ぶばかりだった。

「こいつを殺せば任務は完了だろ。」

「全てが完遂されるまであと一歩だな。」

彼らは油断しきっていた。
こちらを見ようともしない少女を屠るのは簡単なことだと思っていた。


「…っ!何だこれは!!」


得体の知れない黒い蛇のようなモノが、自分の体に巻き付いていく。
体は殆ど動かせず、されるがまま見ているしか出来ない。

「何なんだ!」

一瞬で別世界に一人放り込まれたようで、景色も違えば一緒にいた仲間もいなくなっている。

「…っ!解けないぞ…!?」

幻術だと気づいて解こうとする者もあったが、解くことは叶わなかった。

「何処から…っ、うぐっ!」

次々と何処からともなく湧き出てくる蛇のようなソレは、ぎしりぎしりと体を締め上げていく。

ゆっくりと死へと誘われる恐怖は、感情を殺す処置を施された”根”であっても怖気の走るものだった。
痛みや苦しみ、一人きりである心細さ。
どれをとっても言葉に出来ない恐怖だった。

「が…ぁ…!」

やがて、黒いソレは手を引きちぎり、

「…や…ゃめ…っ!?」

足を引きちぎり、

「……っ!?」

胴体をも引きちぎっていく。

ゆっくり、ゆっくりと。

激痛と共に自分の体がばらばらに散らばっていくのは、正に悪夢だった。


これは幻術だ。


月詠に匹敵する最強の瞳術。


エニシでは成し得ない。


ユキだからこそ扱える、万華鏡による複数を対象とした幻術である。

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