第19章 お別れと始まり
ボロボロとこぼれ落ちる涙を、兄ちゃんが泣き笑いのような顔で拭っていく。
「まだ終わりじゃない。お前にはまだ目的があるだろ?」
そう言われて、イタチとサスケが脳裏に過った。
でも…。
「無理だよ…。私じゃイタチに太刀打ち出来ない…。」
兄ちゃんと肩を並べられるイタチになんてかないっこない。
「お前なら出来るさ。いや…、お前にしか出来ない。」
「嫌だよ、兄ちゃんがいてくれなきゃ。一人じゃ出来ない…!」
やるんなら、兄ちゃんとじゃなきゃ…。
そうでなきゃ、ダメなんだよ…!
縋っても、兄ちゃんは決して首を縦には振らない。
「俺なしでもやるんだ、エニシ。イタチとサスケを止めろ。その争いが不毛だと思うなら、お前が止めてやれ。」
嫌だよ、そんなの!!
「一緒に来てよぉ…!兄ちゃん…!」
身体中に広がるこの痛みをなんて言ったらいいのか分からない。
切り裂かれるような、ギリギリと締め上げられるような激しい痛み。
いっそ、本当に切り裂かれた方が楽かもしれないと思う程に。
叶わない願いと絶望。
のたうち回りたくなるような苦しみと後悔。
「…エニシ。」
胸元を掴んでいた手を離されて、そのままぎゅっと抱きしめられた。
今、こんなにも温かいのに。
これが影分身じゃなかったらと、切に、切に願った。
「兄ちゃんはいつでもお前の傍にいる。いつもお前と一緒だ。だから、生きていってくれ。この先も、ずっと。」
お別れそのままの言葉を聞きながら、只々しがみついて泣くことしか出来なかった。
一瞬のような儚い時間。
兄ちゃんは跡形もなく、本当に何の痕跡もなく、綺麗に消えてしまった。
まるで今あったことが嘘みたいに…。
けれど、嘘じゃない。
幻でもない。
「あ…ぁ…っ…、」
だってまだ感触も温もりも残っているから。
「ああぁぁぁぁぁぁ!!!」
私は膝から崩れ落ちて咆哮を上げた。