第18章 記憶喪失に…なりました?
「初めからよ。…って言うと語弊があるわね。」
そう言って、指を顎に添えるその仕草はエニシのものではなかった。
それだけでなく、言葉遣いや雰囲気もよくよく見ればエニシではなかった。
イタチは瞬時に写輪眼に切り替えるが変化の術ではなく、本人そのもの。
―どういうことだ…?
イタチは只管に混乱していく。
「今日がおそらく、あなたと話が出来る最初で最後になるわ。」
エニシは真っ直ぐにイタチを見つめる。
その瞳には、焦りや不安が浮かんでいたが、使命感のような強かさも感じられた。
「お願いがあるの。…多分、あなたにしか出来ないわ。」
エニシは目を伏せてゆっくりと一度呼吸を整えると再びイタチに合わせる。
「シスイを守って…いえ、止めてほしいの。いつかは分からないけど、万華鏡を使うと言い出す時がある筈なの。心当たりはないかしら?」
『―……。手に負えなくなったその時に、俺は万華鏡を使う。』
つい最近、聞いたばかりのセリフだった。
僅かに見開かれた目を見て、エニシは悲しそうに沈む。
「それはおそらく失敗するわ。私達は…いえ、特にあなたはいついかなる時も見張られている。だから、詳しくは言えないけれど、例えそれがシスイの望みだとしても、私はシスイを止めたいの。死なせたくないのよ。」
「死…?」
―どういう…?……っ!
「まさか、予言書か?」
小さく問うと、エニシは小さく頷いた。