第18章 記憶喪失に…なりました?
「お願い。私はどうなっても構わない。だからどうか、シスイを死なせないで。」
イタチは戸惑いながらも頷き返すと、エニシはほっとしたように微笑む。
笑い方一つとっても以前の彼女と結び付けられず、どうにもイタチには受け入れ難い。
「お前は一体…、」
言いかけた時、エニシはすっと真顔になると口元に人差し指を立てた。
「私達はきっともう一度会うことになるわ。その時に”私”を教えてあげる。」
イタチは何を言うことも出来ないまま、呆気に取られて言葉が出なかった。
もう一度会うとは何のことだ、”私”を教えるとは何を指すのか、など言いたいことは多々あったが、それがどれも言葉として出てこない。
エニシはそれを見て、再び微笑んだ。
「シスイのこと、約束よ。」
彼女はそう言い残して、闇に紛れるように危なげない足取りで帰って行った。