第18章 記憶喪失に…なりました?
道中…無言。
ひたすら無言。
知らない人と何喋っていいのか分からないし、私も話す気力がなかった。
でも、気まずさもある中にどこかほっとするような安心感もあって、不思議な時間になった。
「あの、ここです。」
アパートの前に着いて、私は二人を振り返った。
「ここって…。」
白い髪の人が一瞬懐かしそうな顔をしたけど、すぐにさっきの顔に戻った。
「今日は本当にありがとうございました。」
この人達がいなけりゃ、私は死ぬところだった。感謝、感謝だ。
「…夜に出歩くのは、もう止めた方がいい。」
猫目の人の声を初めて聞いた。
…でも、そうだね。
命あっての物種って言うしね。
「はい、夜に働くのは止めにします。」
苦笑しながら答えたら、その人は少し悲しそうに笑う。
「うん、その方がいいよ。」
「それじゃ、俺達はこれで。」
「はい、ありがとうございました。」
私はそう言って、外階段を登って部屋へと急ぐ。
ガチャガチャっと鍵を開けてドアを開ける前にもう一度振り返ると、まだ二人は見守ってくれていた。
それに笑いかけて手を振ると中へと入って、ガチャリと鍵をかけた。
「ふう〜…。」
気が抜けてドアに寄りかかると、足に力が入らなくなっていき、ずるずるとへたり込んだ。