第18章 記憶喪失に…なりました?
やがて気分が落ち着いてきて、ゆっくり、ゆっくりと呼吸が整ってきた。
ブレていた視界が戻ってきて、焦点を結ぶ。
取り敢えず、強張った体を身じろぎさせて、どうにかこうにか、しがみついていた腕から自分の手を引き剥がした。
「…すみません。ありがとうございます。」
気を抜くと呂律も怪しくなりそうな口を何とか動かしてそう伝えると、一瞬背を摩ってくれていた手がぴくりと震えて止まった。
次いで、私を支えるようにしていた腕がそろりと離される。
「大丈夫か?」
「…はい。」
体にぐっと力を入れて集中すると、ゆっくりと立ち上がった。
動かしづらいけど、なんとか歩けそう。
改めて二人を見ると、一人は真っ白な髪が特徴的な人で、もう一人は黒髪の猫目が特徴的な人。二人ともすらっと背が高い。
「あの、助けていただいてありがとうございました。」
そう言ってぺこっと頭を下げたら、何とも言えない顔をした。
まぁ、そりゃそうだよね。
殺人未遂の現場に出くわしたんだし。
「…送ってくよ。」
白い髪の人がそう言ってくれたんだけど、どうしようかと迷う。
見知らぬ人に、更に迷惑かけるのも気が引けた。
「大丈夫だよ。ま、これも仕事の内だから。」
あれ、なんか考えてることがバレた…?
まぁいいか。
あんなことがあった後に一人きりなのは、正直嫌だ。
「じゃあ…、その、お願いします。」
私はもう一度ぺこっと頭を下げた。