第18章 記憶喪失に…なりました?
今日は久しぶりに休日の予定が合い、イタチとシスイは二人で修行する事になった。
黙々と組手を打ち込んでくるシスイからは、エニシを失った痛みを感じられない。
ただ、以前よりも感情が乏しくなったようには感じられた。
「今日はここまでにするか。」
「…そうだな。」
まるで歯車のように淡々と動くシスイを見ているのは、イタチの胸を痛めた。
会合は、あれ以来下火になっていたクーデターの話がまた持ち上がり、エニシのことが逆に追い風になってしまったように感じる。
イタチとシスイだけが淡々と聞いているだけで、穏健派だった者達までもがクーデターに賛成の意を示すようになってしまっている。
遣る瀬無かった。
災禍を止めたくてやったことが、逆に火種を燃え上がらせる結果になってしまったのだ。
口には出さないが、二人の胸の内は苦々しい想いで埋め尽くされている。
「…帰ろう。」
「あぁ…。」
シスイの声にイタチも応えて、修行場を後にする。
暫く無言で歩いていると、通り道である河原に大小二つの人影を見つけて二人は止まった。
一人は黒い髪の長い少女で、ワンピースに上掛けを羽織っている。
もう一人は目立つ黄色い髪の小さな少年で、赤地に黒のデザインが描かれている長袖Tシャツにジーンズ。
その二人の傍には立ち尽くすサスケの姿もある。
二人は少女の方を見て息を呑んだ。