第18章 記憶喪失に…なりました?
「エニシだろ?何でこんな所にいるんだ?」
一人は不思議そうに、もう一人は心配そうに顔を覗き込まれる。
額当てをしてるから忍の人、なのかな。
それも私達結構親しかった?
「あー…、仕事を探していまして。今ちょっと街を歩いてるんです。」
話したら二人は困惑した感じで顔を見合わせてから、また私の方を向く。
「仕事って…お前、暗部はどうしたんだよ。」
「あ、あんぶ…?」
えっと…それは何でしょうか?
「お前今何やってるんだ?」
代わる代わる質問を重ねられて、答えられないというか、答えずらいというか…。
どうしたらいいのやら。
「どうしたんだい?」
彼らの後ろから、大人の男の人が出てきた。
顔に不思議な赤いペイントをしてる、優しそうな人。
「エニシ…?」
その人は私を見た途端、目を見開いて驚いていくらもしないうちに悲しそうに肩を落とした。
「…俺のこと覚えてる?」
唐突に聞かれて、思わず体が少し強張った。
これって正直に言ってもいいのかな。
でも、言わないといつまでも平行線を辿りそうな予感もする。
「…いいえ。少し前に記憶喪失になったみたいで…。何も…覚えていません。」
両隣で息を呑む音が聞こえて、少し胸が苦しくなって俯いた。
「そう…。俺は、ナナホって言います。君のことはエニシって呼んでいいかい?」
優し気な声に引かれて視線を上げると、ほっとするような優しい笑顔があった。
「はい。」
私はほっとしながら笑い返した。