第4章 そうだ、修行をしよう
「…それでいいのか?」
戦いならいざ知らず、色恋は相手に気づいてもらわなければ始まらない。
恋を実らせたいなら、まずは知ってもらわなければ。
だが、エニシの答えはシスイの理解できないものだった。
「それでいいよ。その方が安心して近づけるし。」
エニシは平然とそう言って出されたお茶を飲む。
「まだ踏ん切りがつかないでいるけど、この想いはいずれ消す。私はイタチとどうこうなりたいとは思ってないから。」
シスイはそれを聞いて瞠目する。
普通は恋をしたならば、その熱量を相手に求めるものではないだろうか。
シスイは少なくとも、そういう恋しか見聞きした事がない。
エニシの様に、その恋を無かった事にしようとするなど初めてのケースだ。
「…何でそう思うんだ?イタチだってお前を好きになるかもしれないじゃないか。」
シスイは静かに問う。
彼には理由が分からない。
だから、聞いてみたいと思ったのだ。
だが、エニシは首を横に振る。
「それはない。断言できる。…イタチはね、一族とサスケを天秤にかけた時、サスケが勝るの。イタチの中ではね、私は一族の括りなの。」
エニシは悲しそうに目を伏せた。
それでシスイはピンとくる。
ノートにもあった一族の全滅。
生き残ったサスケのその後の人生。
そして、イタチとの因縁と殺し合い。
あのイタチが一族を全滅させる時にしくじるとは思えない。
だとすれば、わざと生かした。
それはエニシの言う通り、天秤にかけたからだとすると、確かにエニシの恋は不毛だ、とシスイも思う。