第4章 そうだ、修行をしよう
「おぉ、みたらし。王道だよね。でも今日は重いな。きな粉も捨てがたい。あ、磯部焼きがある。いや〜、でも…。」
シスイは、メニューを見ながらぶつぶつと呟くエニシを眺める。
結局、イタチは誘いには乗らなかった。
真っ直ぐ帰る、と言ったイタチに笑顔で手を振って見送る妹。
シスイはそれを、理解できない、と言わんばかりな目で見る。
今日の甘味処への誘いは、半分はエニシの為に場を設けようとしたのだが…。
「…お前は花より団子だな。」
「え?何の話?」
シスイの呟きに気が付いたエニシが、漸くメニューから顔を上げる。
「お前さ、イタチの事好きだろ。」
シスイは頬杖をつきながら、エニシを見た。
案の定、エニシの顔に朱が差し、そのまま固まった。
「…何でそう思うの?」
何でも何もないだろう、とシスイは思う。
側から見たら丸わかりの行動なのだ。
「お前もうちょっとその分かりやすい性格なんとかしろよ。今に事故るぞ。」
忍は裏を読まれたら終いだ。
情報は武器である。
隠したい事を簡単に読まれていては、仕事にならないのである。
「あの、さ…。イタチはこの事…?」
エニシは恐る恐る聞いてきた。
一応、バレたくないという意識はあったのか、とシスイは半眼で彼女を見た。
「バレてないと思うぞ。」
と言うより、色恋にあまり興味がないのだろう。
イタチは自分へ向けられた悪意には敏感だが、好意には鈍感な様に感じられる。
「相手が鈍くて良かったな。」
シスイが言うと、エニシはそっか、と少し寂しそうに笑った。
彼にはその様子が引っかかる。