第18章 記憶喪失に…なりました?
「記憶喪失でしょうかね。」
「記憶喪失、ですか。」
「とにかく、ご家族に連絡を取りましょう。」
「はあ…。」
お医者様が来て診察された後、そう言われた。
「どこか頭を打った、という形跡もありませんし、突発的なものかもしれません。暫くは様子をみましょう。」
「様子をみるってことは、記憶が戻る場合もあるってことですか?」
「何とも言えませんね。戻る場合もあるし、そのままの場合もある。こればかりは運としか言いようがありません。」
「そうですか…。」
まぁ、待つしかないのなら、そうするしかないか。
「では、何かあればまたお呼びください。」
「ありがとうございました…。」
答えて頭を下げると、下げ返されて、お医者様は出ていった。
看護師さんもいなくなってて、病室は私一人だけになった。
夕方になり、別の看護師さんがやってきた。
「あの、ご家族のことなんですが。」
「はい。」
「その…連絡がつかなくて…。」
連絡がつかなくて…?
「えーっと、つまり、私の身元がもう分かったって事…ですよね?」
私を知ってる人がいるみたいだったし。
「うちは一族の方で間違いないんですが…。その、ですね…。ご家族の方が引き取りを拒んでいまして…。」
言いづらそうに伝えてくれるんだけど。
もうちょっとはっきり言ってくれちゃっていいんですよ。
「つまり私には帰る家がない、と。」
「あの…、…はい。」
「えーっと…、この場合どうなるんでしょう?」
まさかここに住むわけにもいかないよね。
「ご家族が迎えに来られれば、その場で退院も可能なんですけど。お迎えがない場合は…、どうなるんでしょう?」
「…あの…。それ、私が聞きたいです。」
私いきなりホームレスになっちゃうの?
「そ、そうですよね。取り敢えず、入院の期間を確認してきます。それと、任務依頼所に問い合わせてきます。」
にんむ…何だって?
「あ、えっと、それでお願いします。」
何だか分んないけど、窓口があるなら是非ともお願いします。
頭を下げると、はい、と返事が返ってきて、その人は急いで出ていった。