第17章 うちはの里を作っちゃおう2
「…終わりました。」
エニシは、髪を鷲掴まれたまま穏やかな顔で気を失っている。
「本当にやったんだろうな。」
イナビから聞かれたシスイは、徐に虚ろな眼を上げてひたと見据えた。
「試してみますか?」
「……っ!…いや、いい。」
目が合うだけでぞくりと肌が泡立つような深淵を感じ取り、イナビは怒鳴り返す事もできずに引き下がった。
「…もういいでしょう?エニシは罰を受けました。」
シスイはそう言って妹へと手を伸ばすが、それをイナビが乱暴に止める。
「まだだ。これからどうするか決めてないぞ。」
年長者として、年端もない万華鏡を持っているだけのシスイに気押されたことがイナビのプライドに障ったのだ。
最後の処遇くらいは仕切り直さなければ、という意地だけが彼を突き動かす。
「街中に…捨ててきます。」
「それでは…」
「あまり無体を強いては、火影の気遣いを無為にしたと騒がれますよ。」
「それが何だ!」
何の感情も映さないシスイの目が再びイナビに向けられる。
「…何か疚しいことを消したがっているのでは、と勘ぐる者もいるのでは?」
「…シスイ…!」
ぎりぎりと歯を鳴らす程の怒りを露わにしながら殺気が高まっていくのを、部屋にいる誰もが感じ取った。
「止めよ!!!」
フガクの一喝に、部屋中に広まった殺気が霧散する。
彼はゆっくりと、シスイ達に歩み寄っていく。
「一族同士で争ってはならん。」
「しかし…!!」
「我らには!…成し遂げねばならぬ事がある。その前に結束が綻んでしまっては成すべきことを成せなくなってしまう。そうだろう?」
「フガクさん…。」
「エニシは既に粛清を受けた。それ以上の罰は無用だ。」
言いながら、イナビの傍に立ったフガクは掴んでいた手を離させる。
その拍子に後ろに倒れそうになったエニシをシスイは素早く抱き留めた。
「後の処遇は、シスイに任せる。いいな、シスイ。」
「…はい。」
シスイはエニシを抱きしめたままフガクに黙礼を返し、素早くその場を後にした。