第17章 うちはの里を作っちゃおう2
その言葉を受けてイナビさんが私の髪を乱暴に鷲掴み、無理やり引っ張られる。
その拍子に、沢山の赤い眼が蔑みの色を持って私を見ているのが見えた。
「お前の様な恥晒しは一族には要らない。」
ヤシロさんがイナビさんの横に立つ。
「情けはかけてやる。記憶を消して、他に埋没して生き恥を晒せ。」
「シスイ、やれ。」
テッカさんの声に、兄ちゃんが近づいてくる。
その眼にはしっかり万華鏡が浮かんでいた。
兄ちゃんが目の前に来て、私の目線に合わせてしゃがんだ。
その眼は揺れていて、今にも涙が浮かんできそう。
「エニシ…。」
気に病むことなんてないよ。
リスクを承知で私はこの道を選んだ。
だから、
「大丈夫だよ、兄…」
「勝手に喋るな!!」
「今生の別れくらいさせてください!!」
イナビさんに掴まれた髪を引っ張られたけど構うもんですか。
兄ちゃんには伝えたいことがある。
「自分の命を大事にして。危なくなったら逃げて、生きて。例えどんなに大事にしているものを捨てることになっても。」
一族を捨てることになるとしても…。
「お願い、約束して。」
兄ちゃんにはこれで伝わったらしい。
一瞬、動揺が走ったけど、持ち直した。
「あぁ…。約束、する。」
うん、それで良し。
私は笑顔を浮かべた。
最後だもん。
私は近い未来に命を絶たれる。
だから、これが生きて兄ちゃんに会える最期。
「笑って。」
お願いするように言うと、泣き笑いの様に顔が歪んでしまった。
「…すまない。エニシ…。」
私は兄ちゃんの目を見たまま、少し首を振る。
謝る必要なんてない。
沢山、沢山大事にしてもらった。
話を、我儘をいっぱい聞いてもらった。
どんなに愛されてたか、よく分かってる。
「…すまない。」
由紀。
何故かその名前で呼ばれた瞬間、チャクラが乱れる感覚が大きくなった。
後ろから誰かに包み込まれる様な感覚と共に目を覆われた気がして、意識が遠のいていった。