第17章 うちはの里を作っちゃおう2
どこをどうやって抜けたのか。
全く覚えのないまま、ふらふらとした足取りでたどり着いたのは火影屋敷だった。
ゆるゆると見上げると、火影様の部屋に明かりが灯っているのが見えた。
いる。
まだ、いる。
答えを…
「聞けるかもしれない…。」
私はゆっくりと壁に足を掛けて登っていく。
誰に会うこともなく、開いていた窓まで易々と辿り着いた。
「エニシ…。」
ヒルゼン様の呟きに、暗部が一斉に出てきて構えた。「いつの間に」「とかどうやって」って言葉が飛び交うけど、私にはどうでもいいことだ。
「聞きたいことがあって来たんです。」
そう言うと、ヒルゼン様が右手をすっと上げた。下がれの合図だ。
ざわざわと騒がしかった暗部がぴたりと口を噤む。
「お前達は下がれ。」
「しかし…!」
「下がるんじゃ。」
そんなやり取りを眺めていると、そろりそろりと暗部が引いていき、ヒルゼン様と私だけになった。
「して、聞きたいこととは。」
「里にとって、うちは一族は何なんですか?」
何にも考えない、捻りのない質問にヒルゼン様は目を瞠った。
そんな驚く質問したかな?
そして、うーむ、と考え込む。そうかと思ったら、徐に顔を上げた。
「…その前に問うてみたいのじゃが、いいかの?」
「何を?」
「何故、あの土地を手に入れたのじゃ。どうして里別けなぞしようと思ったのじゃ。」
何だ、そんなことか。
「とても眺めがいいし、静かだから。水が美味しくて秘境みたいに緑豊かな所なんです。」
長閑でいい所だった。
「こんな鬱屈した場所で、鬱憤を溜め込むなら里別けをしてでも出て行った方がマシだと思ったから。」
穏やかな暮らしができれば、大半の人が変わってくれるんじゃないかと思ってた。
なのに…。