第17章 うちはの里を作っちゃおう2
「お願いがあるの。」
ユキの真剣な眼差しに、動揺を抑え込みながら向き合った。
「もしも…もしも、そんな場面に直面したら、ここを捨ててでも逃げてほしいの。」
「いや、それは…。」
―難しい。
シスイはその言葉を呑み込む。
「シスイ…、お願いよ…。」
ユキはシスイの心情を悟りながらも言い募る。
彼女は表には出られない。故にそれしかできる事がないのだ。
シスイとてそれは理解している。
それでも、自分にできる事があると分かっていて一族を見捨てることは出来ないのだ。
また、そうまでして生き延びることに彼は価値を見出せなかった。
「ユキ…。」
二人の想いは相入れない。
シスイは気休めでもユキに嘘を言うつもりはなかった。
「すまない。俺は何があっても一族を見捨てない。例え予言の通りになるとしても、俺はその道を選ぶ。」
ユキはぐっと目を瞑り少し俯くとはらはらと涙を溢した。
「あなたなら、そう言うと思ったわ…。」
シスイはかける言葉がなくて、それでも涙を溢すユキを宥めたくて、握りしめている両手の上にそっと手を乗せる。
すると、ユキの涙は更に溢れてしまい、シスイは益々困り果てた。
「あなた、馬鹿よ…。」
ユキはそう言いながら、震える手でシスイの両手を包み込むように強く握りしめた。
「ごめんな…。」
二人は暫くそのままに向き合っていた。