第16章 幕間
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『私が囮になるんで、サカキさんが王手取ってください。』
エニシが巻物から次々に胡椒玉を取り出すのを俺は唖然と見ていた。
だって唖然としたくなるだろう?
普通は、他を蹴落としてでも自ら勝ち星を掴みに行くものだ。
『…お前も巻き添え喰うぞ?と言うより、お前の勝負なのに旨みを人に譲るのか?』
そう言ったら、少し驚いた様に俺を見てきた。
『何言ってるんですか。カカシ先生の素顔を見ることが目的なんだから、逆に囮役の方が特等席ですよ。』
それに、と言いながらエニシは姿勢を正す。
『サカキさんの方が精度もクナイの腕も私よりか上なんですから、確実な方を選んだ方が勝率上がります。ってことで、トドメお願いします。』
すっと衒いもなく頭を下げる様は、忍としてと言うより人として素直に凄いと思う。
うちは一族だから尚の事。
忍は手柄を立ててなんぼの世界。
それを全体を見通し、個々の能力を見極めて自分を駒の一つとして動ける人間がどれだけ居ようか。
『…分かった。その役、引き受けた。』
託されたからには俺も駒としての役目を全うしようじゃないか。
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そうして、任された役を本気でこなした結果、狙い通りカカシさんが防いだ腕に当たった。
胡椒がもわもわと拡散し、
「「はっくしょん!!」」
案の定、エニシとカカシさんが大きくくしゃみをした。
少し笑ってしまう。
やっぱり、巻き込まれてるじゃないか。