第15章 うちはの里を作っちゃおう 1
「誰の…?」
私は疑問を口にしながらもひっくり返してみた。
こういうのって大体裏に名前なり印なり、自分のだって分かるマークがあるのよ。
因みに私は、母さんに名前のイニシャルを飾り文字で刺繍してもらった。
この額当てには白い花が刺繍が施されていた。
とても上手な小さい花。私には野苺の花に見える。
「これは…。」
愕然とした様な先生の声に、少し驚いて見上げた。
「知ってるんですか?」
先生の目は悲しそうに揺れていて、胸元の服を苦しそうに握り込んでいた。
嫌な予感…。
「…リンの…額当てだ…。」
やっぱり、か…。
ここはやっぱりアジトなんだ、って思った。
同時に、先生に申し訳ない思いが込み上げた。
決定的に先生の傷を抉ってしまったんだ、って思ったから。
痛そうに目を瞑る先生に何て言っていいのか、何が慰めになるのか見当がつかない。
一文字も言葉に出来なくて、でもただ見てはいられなくて…。
先生の隣に寄り添って、ゆっくりと背を摩ることしかできなかった。
暫くそうしていたら、先生はゆっくりと深く深呼吸しだした。
始めは震えていた吐息も、段々と落ち着いていく。
何度目かの深呼吸を終えて先生が大丈夫のサインを出したから、私はそっと手を離した。
「これは俺が貰っていいか?」
「はい。」
先生は兄ちゃんに確認を取り、私に視線を向けた。
「どうぞ。」
これは、私達が持つより先生が持ってた方がいい。
その方が、リンさんもきっと喜ぶ。