第15章 うちはの里を作っちゃおう 1
アスマさん達と別れて、私は里の景色をぶらぶらと気の向くままに歩く。
それは、幻術の参考になる景色を探すため。
綺麗だなぁとか、落ち着くなぁとか思う風景を改めて集めてみようと思い立った。
本当はカメラが手元にあったら良かったんだけどね。まぁ、追々かな。
演習場、森林エリア、草原エリア、高台、街中…。
こう見ると、ここって広いよな〜。
それを城壁が半円状にぐるりと囲ってる。
山に助けられたとはいえ、結構な範囲に城壁を作ったもんだよ。
「ここも結構眺めいいねぇ。」
私は比較的大きな建物の屋根の上から街並みを見下ろしている。
今日は風が強い日で、ざぁ〜と突き抜けていく流れの中に、時折薄紅色の花びらが混じっている。
何処かで桜でも咲いてるのかな。
「お〜い!エニシ〜!」
誰?
下の方をきょろきょろ見ると、ちょっと離れた所に甘栗甘の看板が見えて、その前にアンコさんらしき人が手を振ってるのが見えた。
「お〜い!」
私も振り返すと、その人はこいこいと手招きし始めた。
誘われるがままに近づくと、ライドウさんも一緒なのが分かり、あと一人知らない人がいた。
「お久しぶりです、アンコさん、ライドウさん。」
「おう、元気か?」
「お陰様で。」
この二人に会うのは約一年ぶりになるのか。
「ってか、あんたあんな所で何やってたのよ?」
「景色のいい場所探してました。」
「それ見つけてどうすんの?」
どうすんの、って言ってもなぁ。
瞳術の事はあんまり言いたくないし。
うーん…。
「楽しむ、みたいな?幻術の参考にもなるし。」
ぼかしてみた。
「変なことやってんのね〜。」
「変なことって、ひどくないですか〜?」
ムッとしてアンコさんに言うと、彼女はからからと笑う。
「ね、あんたも団子食べてかない?私達も今からだしさ。」
「だな。お前も来いよ。折角また会ったんだし。」
二人からのお誘いに、一緒にいたもう一人を見上げた。
肩くらいの髪を後ろに束ねたちょっとかっこいい感じの人だった。
私は大歓迎だけど、この人はどうなんだろう。
そう思ったら、その人はにっと笑う。
「俺は構わないぜ。」
ならいっか。
「んじゃ、お邪魔しまーす。」
満面の笑みで答えたら、何故か二人は小さく笑った。