第3章 私が今、出来る事
人が多く集まる所を見て回る。
救護所だったり、救助活動中であったり様々だった。
中には、暗部が縄張りを張るかの様に規制線を引き、頻繁に出入りしている所もあった。
クシナさんの家に行ってみた。
遠目で見たら、暗部が沢山出入りしていた。
やっぱり死んじゃったんだ、と悲しくなる。
私は近づく事なく踵を返した。
里全体が被害に遭っていた。
やっぱり手紙は無意味だったのかな…。
私は夕焼けで染まった河川沿いの道をとぼとぼと歩く。
家に帰る気にもなれなくて、土手に座って橙色の川を見る。
空は、作ったかの様な濃い茜色だ。
「お前、うちはエニシか?」
急に声をかけられて、どきりと心臓を跳ねさせながら声の主を振り仰ぐ。
そこには狐の面の暗部がいた。
私が驚きに声を詰まらせたまま黙って頷くと、少し間を置いて一通の手紙を差し出された。
「…クシナさんから。お前宛だ。」
私は驚いた。
「…何で私に…。」
あの手紙には私の名前は書いていない。
返事が返ってくる筈ない。
「知らないよ。中を見ればいいだろ。」
私は手紙を受け取ると、恐る恐る封を開けた。
「…あなたは中身を知ってるの?」
ふと、気になって聞いてみる。
「…さぁ、どうかな。」
知ってるんだ。
まぁ、検閲はするだろうね。