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もう一度、を叶えるために。first

第3章 私が今、出来る事



九尾出現場所と思しき場所に来た。

「……。」

何も言葉が出ない。
そこには、クレーターがあるだけで、他は何もなかった。
つい昨日まで、所狭しと家々が立ち並んでいたのに、あるのは木屑ばかり。

残った家々は、半分欠けていたり、巨大な爪で引っ掻かれたかのような傷跡があったり。
どれも住めたものではない。
瓦礫の山と言っても過言ではないものまである。
この中に人がいたと想像するだけで背筋が凍る。

尾獣が一人暴れるだけで、こんな被害が出るなんて…。

漫画では、ほんの数ページ分の描写が今生々しく目の前に広がっている。
これは、そう。
お盆時期になると頻繁に流される空襲の様な光景だ。


「子供が来る所じゃないよ。」

呆然と見ていたら、知らないおじさんに声をかけられた。

「昨日、ここで大勢死んだんだ。遊び半分で来るものじゃない。」

その人は顔を顰めて私を見た。
思わずムッとしてしまうが、それをここで言ったところでどうなるものでもない。

「…私は…、昨日起きた事が何だったのか…。それを自分の目で見て確かめたいと思いました。」

私が思った事を思ったままに言うと、その人は目を瞠った後、好きにしな、と言って去って行った。



瓦礫を撤去する度に、血の匂いが漂う。

そこら中から、人の啜り泣く声が聞こえる。

燻る煙は、きっとまだ火元を処理出来ていないのだろう。

歩く度、気分が沈んでいく。
止められなかった一端が自分にもある様な罪悪感に包まれる。

「…どうしろって言うのよ。」

どうしようも出来ないと分かっている。
この問いに答えられる人もいないと分かっている。

私は、当たり散らしたくなる様な身の内のどろどろを、ぎりっと唇を噛んで耐えた。
そして、そのままその場を後にする。

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