第15章 うちはの里を作っちゃおう 1
場所を移して演習場へ。
まずは紅さんから幻術を教わる。
基本知識から擦り合わせを兼ねて実践も織り込んで教えてもらい、印の種類や理由、そして組み合わせを教えてもらう。
「幻術は相手への精神的攻撃が一般的な使われ方だけど、隙をつくって意味でも有効な手段よ。」
「隙をつく?」
「そう。錯乱出来ればいいんだもの。あなたの場合、辛い場面を再現するのが苦手なんじゃない?分かりやすく言えば、誰かを刺し貫く場面や惨殺する様な場面を思い浮かべることが出来ない、または抵抗がある。」
そう言われて、あぁ、と思い至る事はあった。
「確かに苦手かも…。幻術の中とは言え、相手をズタズタにするって凄く忌避感があって。でもそういう感情をなぜか押さえつけておけなくて。」
「稀にそういう子もいるのよ。大丈夫、あなただけじゃないわ。」
紅さんの笑みに、ほっと肩の力が抜ける。
案外、気にしてたのかも。そのせいで、瞳術がブレてたのを。
「だから、正反対の性質の幻術だっていいのよ。幻術はそもそも、惑わせるものなんだもの。すぐにバレて解除されても一瞬の隙を作れればいいのよ。こんな風にね。」
と言われて、気づいたらすっごく綺麗な景色が広がっていた。
「わぁ〜!」
野原一面に青い花が咲き乱れて花弁が舞い、空に大きな満月がかかっている。
遮る木々は何もなくて、見渡す限り淡い月明かりに照らされた花畑。
しゃがんで足元の花を見ると、一つ一つが大ぶりの勿忘草だった。
指先で触れてみると確かに生花の感触がする。
「凄い…。」
こんな綺麗な景色を作り出せるなんて…。
「エニシ、自力で解いてごらん。」
紅さんの声に、すっと写輪眼を開くと、ぱっと切り替わる様に現実が戻ってくる。
「すっごい綺麗でした!」
「そうでしょう。どう?こんな使い方もあるのよ。」
紅さんに言われて、少し考える。
どうせだったら前世に見聞きした絶景を再現してみたい。