第14章 暗部でのお仕事始めました
「…噂を流してみるか?」
「うわさ…?」
何の?
「最近、”見かけない顔の余所者が彷徨いてるらしい。そいつはどうも写輪眼を持っている様だ”、と。」
「……!」
そっか…。その手があった。
あ、でも…。
「うちはの中でその噂を流したとして、みんな信じるかな?」
「そうだな…、外から流すか。里のあちこちで噂を撒けば広がるかもしれない。」
「だったら…、こう付け足そう。”南賀ノ神社の周辺で見た事がある。面を付けた不気味な奴だった”って。前(前世)に見た時オビトは顔を隠してた。今も隠してるんじゃないかな。そしたらヤシロさんの動揺を誘えるかも。」
もし、その火種が上手い事燃え広がれば…。
「…いつかのビラが役に立たないかな?」
兄ちゃんは難しい顔をする。
「それ、噂の元は私ですって言っている様なものじゃないか?」
「だからこっそり撒くの。夜中に数枚。少しずつ、少しずつ。」
「俺はあまり気乗りはしないが…。撒くのなら一度だけ。それも数枚にとどめた方がいい。噂に興味があるのなら誰かが拾うだろうさ。」
「分かった。」
私は否やもなく頷く。
やらないよりかはいいと思うからね。
「イタチにも伝えるぞ。」
「イタチも?」
てっきり二人で動くのかと思ってた…。
「何だ、嫌なのか?」
兄ちゃんに不思議そうに返されて、私が首を振ると、何故か兄ちゃんは少し笑った。
「この間の…、お前が話してくれて良かったって言ってたぞ。ずっと気にしてるみたいだったからな。」
あ…、前世の。
「蚊帳の外にすると、またイタチが落ち込むぞ?」
「ゔ…。別に蚊帳の外にしたわけじゃ…。」
「まぁ、そうだが。とにかく、あいつももう事情も知ってるんだし、”俺たち”で動くんだから話していいんじゃないか?」
うん、そうだね。
「じゃあ、言っておいて。」
「あぁ。」
私たちは、そっと御堂を抜けて家路を急いだ。