第14章 暗部でのお仕事始めました
ある日の夜。
三日月の綺麗な晩のこと…。
シスイは覚えのある気配に、エニシの部屋を隔てている襖を開ける。
「…ユキ、か?」
障子にもたれかかって月夜を見上げる”彼女”にそっと声をかける。
すると、彼女ははっとした様に障子に預けていた頭を持ち上げて、こちらを振り返った。
「おかえりなさい。」
静かに笑う”ユキ”に、シスイは笑い返す。
「ただいま。」
そう答えながら、彼はユキの隣へと腰を下ろした。
「今日は起きていられるのか。」
「そうね。内々の任務だったから、身体があまり疲れてないみたいね。」
「そうか。」
最近、シスイとエニシはそれぞれ個別の任務を請け負う事がちらほらとあった。
「そちらはどうだったの?」
ユキに問われたシスイは、少し間を置いてから口を開く。
「問題ない、無事終わった。」
イタチとの任務は、うちは故か取り締まりの意味合いが強い任務ばかりだ。
気は滅入るが、だからと言って失敗をしたわけではない。
だから、”問題ない”のだ。
「そう…。」
ユキは、シスイの内情を汲んでいるのかいないのか、何も問うことはなかった。
彼はそれにほっとしながらも話を変える。
「そういえば…。この間、カカシさんと任務帰りに何処に行ったんだ?」
本当はエニシに聞こうと思っていたのだが、あの日から二人になる機会がなく、今日まで聞けずじまいだった。
ユキは少し気まずげに微笑んだ後、あれね、と話しだす。
「うちはオビトの亡くなった場所、に行って来たの。」
それを聞いたシスイの顔が一気に胡乱げに変わる。
「まさか…。」
「そのまさかよ。結論から言えば、ほぼ全てが露呈したわ。」
「あの馬鹿…。」
シスイは思わず頭を抱え、それを見たユキはくすくすと笑った。