第14章 暗部でのお仕事始めました
直上的な彼女の事だ。きっとあたふたするだろう。
そんな予想をしていたのだが…。
「それ、言われる事多いんですけど、別に恋愛的な意味合いないですよ。人として尊敬してるって感じです。」
予想に反して、彼女はいたって冷静に返してきた。
カカシは拍子抜けする。
「…シスイみたいに?」
「うん、まぁ…そうですね。兄ちゃんと同じくらいには尊敬してます。」
ちょっと違う気もするけど…、と小声で付け足すエニシにカカシは笑いをこぼした。
どう見てもシスイの時とイタチの時とでは熱量が違う。
しかし、頑なさを感じ取ったカカシは別の角度から探りを入れる。
「エニシはさ、将来の夢とか、あるの?」
「将来かぁ…。」
エニシはカカシの問いに暫し考える。
「特にないかなぁ…。普通に稼げて普通に暮らせれば。」
「随分と…。もっと普通の女の子みたいに、誰彼のお嫁さんに〜とか、お姫様に〜って、ないの?」
カカシがそう言うと、エニシは嫌そうに顔を顰めた。
「低学年じゃあるまいし。もうちょっと現実的なのお願いしますよ。」
「古いのね…。俺がアカデミーの時はそんな話題で持ちきりだったんだけどねぇ。」
あまり周りと関わった記憶のないカカシの、朧げながら残っていた記憶だったのだが…。
彼は自身が早々にアカデミーを卒業した事を失念している様だ。
「まぁ、記憶が戻る前はそんなんもあった気がしますけど、記憶が戻った途端にすっ飛んでいきましたねぇ。」
「享年十八歳だっけ?」
「そうです。だから大人になっていくってことが、どんなもんなのかって想像もついてましたし、資本主義の国だったんで、お金さえあればどうにかなるって事も知ってました。」
「夢がないねぇ。」
「平和あってこその夢ですよ。忍にゃ遠い話っす。」
それもそうか、とカカシは納得してしまう。