第14章 暗部でのお仕事始めました
「ご馳走さまでした〜。」
エニシが出入り口からカウンターに声をかけると、テウチの「はいよ」と言う声が聞こえて、彼が姿を見せる。
「悪いね〜。よろしくね〜。」
「は〜い。」
エニシは答えてから外に出て来て暖簾の外されたドアを閉めた。
今は真夜中に近い時刻で、どこの家も寝静まっていた。
空には、満月に近い大きな月が出ていて、足元を淡く照らしてくれる。
秋に入り始めた季節だからか、少し肌寒い。
無言で歩く地面には、大小二つの影が揺れていた。
そして、カカシはふと思い出す。
「そう言えば、うちはイタチって子も最近入ったよね。」
そう言うと、エニシは驚いたように彼を見上げる。
「イタチを知ってるんですか?」
「凄く出来のいい子だって事は知ってる。」
エニシは、そっか、と自分の事のように嬉しそうに笑う。
「イタチは、兄ちゃんの友達なんです。」
そう言って話し始めたエニシの目はとても柔らかで、花が綻ぶような艶やかさが垣間見えた。
「静かで、ちょっと天然なとこあるけど、凄く強くて、大人みたいにしっかりしてる人なんですよ。たまに私の修行にも付き合ってもらう事もあって。厳しいけど兄ちゃんと違ってちゃんと教えてくれるし、優しいんですよ。」
恋をする女は美しい、とよく言われるが、それをカカシ自身に向けられた時は何も思わなかった。
だが、エニシを見ると、成程と納得できるような愛らしさがある。
「シスイは教えてくれないの?」
彼女の兄の話を持ち出すと、その目は途端にいつもの様に戻ってしまう。
「教えてくれるけど、『体で覚えろ』が多くて。限界の限界まで仕込んでくるし。かなりしんどいんですよ。」
「…ふーん。エニシはイタチが好きなの?」
カカシは思い切って聞いてみる事に。