第14章 暗部でのお仕事始めました
「ここだよ。」
カカシが指さす先は、大きく抉れた地面に大小様々な石が埋まった洞窟跡。
エニシはそれを見て一瞬怯むと、ぐっと体に力を入れる。
「…よしっ。やるぞ。」
彼女は、独り言を呟くと軽快に瓦礫の山を下っていく。
カカシはそれをぼんやりと見ながら、先ほどのやりとりを思い出していた。
『…オビトじゃない。オビトは…確かに目の前で死んだ。』
最後に見た光景は、今もカカシの脳裏に鮮明に焼きついている。
右半身の大部分を岩に潰されて、誰が見ても絶望的なあり様だった。
思い出すのも苦しいほどに…。
『…もし、彼が生きていて…、リンさんの最期を知ってるんだとしたら…?』
―何でそれを知っている?
どうしてお前がそれを…。
『ごめんなさい…。』
そう言ったエニシの目には、いつも向けられる感情がなかった。
他人から向けられる目は決まっていて、蔑みの目か英雄を見る目。
だが、彼女は悲しみと…気遣い。
カカシ達を知っている、仲間が向ける労わりの目をしていた。
暗部に保管されている報告文だけを見れば、誰もが尾獣を宿したリンに、カカシが止めを刺したように思うだろう。
他ならぬカカシがそう報告したのだから、そのように記載されている。
だが…、本当は違った。
カカシはリンを守ろうと懸命に戦っていた。
だが、そのリンが自ら千鳥に突っ込んできたのだ。
絶望の前に呆然とするカカシに、リンは微笑みながら目の前で息絶えた。
それは側から見れば、あたかもカカシがリンの命を絶ったように見えるだろう。
何故、知っているのだろう、とカカシは思う。
リンの最期をどこまで知っているのだろう…。
あの時、アオバ達と話していたあの日。
仲間はきっとエニシに教えなかっただろうし、エニシも聞き出そうとはしていなかった。
それは、既に彼女は知っていたからなのだとカカシは察した。
下忍になって間もないエニシに、当時暗部の任務に該当するリンの出来事は調べられなかっただろう。
シスイにもそれは同じことが言える。