第3章 私が今、出来る事
「お前、遅かったな。」
家路を歩いていると、後ろから兄ちゃんの声がした。
私は立ち止まり、振り返って笑う。
「おかえり〜。兄ちゃんこそ、今日早いね。」
私は兄ちゃんと隣立って歩き出す。
「任務が然程難しくなかったからな。お前、今日もクシナさんとこ行ってたのか?」
「うん、まぁね。でも会えなかった。また明日行ってみる。」
「…そろそろ止めとけ。潮時だ。」
兄ちゃんは、少し困った様に言った。
分かるんだけど。
でもなぁ。
「手紙は渡したんだろ?」
「うん…。」
手紙を渡したから、はい終わり、なのはね。
何かちょっと寂しい。
実物がいるんなら、やっぱ話したい。
「お前なぁ…。」
兄ちゃんは、ガシガシと後ろ頭を掻いた。
「いや、うん、分かってるよ?分かってるんだけどさ。」
私は慌てて取り繕う。
「すっごくいい人なんだよ。だから出来るだけ会いたいって言うかさ…、なんて言うか…。」
でも、すぐに本音が漏れ出して、俯いた。
うちはにあらぬ疑いがかからない様に控えるべきって分かってる。
手紙も、慎重を期してポストに入れた。
あんなに手に汗握りながら忍術駆使して隠れた事なんて一度もない。
信じられる?
壁に隠れる術使ってポストの裏側にいたのに全くバレなかった。
あれ、私意外に才能あるかも!?なんて兄ちゃんに言ったら鼻で笑われたけど。
そうまでして、うちはに火の粉がかからない様に気をつけたなら、本当はもう会いに行かない方がいいだろう、ってことは分かる。
俯いて葛藤していると、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
見ると、仕方ないな、って笑った顔があった。
「ごめんね。あとちょっとだけ。」
私は両手を顔の前で合わせた。
「気が済むまで行って来い。どうせあと数日だ。」
「うん。」