第3章 私が今、出来る事
「はぁ、はぁ、はぁ…。」
苦しい。
肺が痛い。
喉がヒリヒリする。
繁華街に着いた頃には、息は上がり、足はガタガタ。
けど、その甲斐あって撒くのには成功した。
あんな奴等に捕まってたまるか。
残り少ない日数をクシナさんと過ごすんだから。
私はまた、橋の上に行き、クシナさんの姿を探す。
彼女の髪は分かりやすい。
綺麗な長い赤はよく目立つ。
今日は10月10日。
日本だったら目の愛護デーだったかな。
保険だよりとかで、よく載ってたよね。
1を眉毛に見立てて0を目に見立てる。
アホっぽい、って思ってたけど、一度そう見てしまうと、もうそれ以外には見えない。
それですっかり覚えてしまった。
出産は10月初旬。
もう、いつ会えなくなってもおかしくない。
出来る限り会いたい。
私はいつもの様に欄干に手をかけ、風に揺れる赤を探した。
…来ない。
いや、通らない、が正解か。
今日は買い物に来てないのかな…。
空は夕焼けを過ぎて、宵闇だ。
今日はもう帰ろう。
私は諦めて、繁華街を後にした。