第13章 変わりゆく日常と濃くなる影
『まぁ、初恋ではあるけどそれだけだよ。
もうずっと前のことだし。だからイタチともそういう関係にはなりたいとは思ってないよ。』
エニシが自身に対してそんな想いを抱いていた事を初めて知るイタチは少し戸惑う。
『私ね、結婚しないって決めてるの。』
聞いた覚えがあるセリフだった。
前は然程気にも留めなかったそれが、今はとても気になった。
『だからさ、一生友達でいよ!』
イタチが言われたわけでもないのに、チクチクと胸が痛む。
―何故だ…?
「何か見つかったのか?」
後ろからかけられた言葉に、瞬間的に息を詰めた。
彼はぎゅっと見えない位置で手を握ると、少し振り返る。
「いや、特に異変はない。」
それを聞いた男は僅かに顔を顰める。
「隠したって無駄だぞ。」
イタチは無言で応えた。
こういった輩は、肯定しようが否定しようが疑ってかかられる。火のように燃え上がる一方で鎮火のしようがないのだ。
どうあっても燻り続けるのであれば、下手に言葉を重ねる必要はない。
イタチは、睨む瞳を真っ直ぐに見据え続けた。
「…ふん。精々裏切りに勤しめばいいさ。」
男はそう言って立ち去る。
その後ろ姿を少し見遣ってから、再び画面と向き合った。
そこには既に二人の姿はない。
イタチは周囲の視線に気を張りながらも監視を続けていった。