第13章 変わりゆく日常と濃くなる影
イタチが暗部に入り、早三ヶ月が過ぎた。
初めこそ、やっかまれたり邪険にされたりと風当たりは強かったが、人は慣れていくのだろう。今は遠巻きにされはすれど、然程気にする者はいなくなった。
いつものように、一族を監視するカメラモニターの前に座る。
誰も彼もが自分達が監視されているとはつゆほどにも思っていないのだろう。
いつも自分が見る風景と変わらない日常が繰り広げられている。
近所の人とおしゃべりを楽しむ者、通りを掃除する者、商いに勤しむ者。
この風景だけが、うちは一族の全てであれば何の軋みも生まないのだが…。
淡々と画面を切り替えるイタチの手が、ある画面でぴたりと止まる。
エニシとトウキだった。
二人は向かい合い何かを話していて、その中でトウキの口元が”好き”と動いたのが見えた。
それが気になったイタチは少し拡大して口元に注視する。
少しすると、二人は互いに肩を叩きながら笑い合う。
『まぁでも、気づかなかったのはごめん。全然知らなかった。』
『そうだろうとは思ってたよ。』
そんな言葉を交わし合ったあと、エニシは少し考え込んだ。
『ごめん…。私、そういうの考えられなくて。トウキがどうとかってより、私の問題なんだよね。…多分、私恋愛に向いてないんだと思う。』
それを読み取り、トウキがエニシに想いを打ち明けたのだろうと推測できた。
『それこそ嘘だろ。だって、お前イタチが好きだろ?』
自分の名前が出た事に、驚いた様にドキリと心臓が少し跳ねた。
だが、
『いや、好きじゃないよ?』
続いて出た言葉につきりと痛みが走る。