第13章 変わりゆく日常と濃くなる影
「まぁでも、気づかなかったのはごめん。全然知らなかった。」
「そうだろうとは思ってたよ。」
トウキの目は返事を促してるような気がして、少し考え込んだ。
でも、どう考えても私の答えは一つだけ。
「ごめん…。私、そういうの考えられなくて。トウキがどうとかってより、私の問題なんだよね。」
どう頑張ってもいいビジョンが浮かばない。
きっと誰とそういう仲になっても悲しい結末を迎えるんだろうなっていう漠然とした予感がある。
「多分、私恋愛に向いてないんだと思う。」
「いや、それこそ嘘だろ。」
憮然として答えるトウキに、はて?と首を傾げる。
「だって、お前イタチが好きだろ?」
「いや、好きじゃないよ?」
それこそ何でイタチが出た?
「まぁ、初恋ではあるけどそれだけだよ。
もうずっと前のことだし。だからイタチともそういう関係にはなりたいとは思ってないよ。」
私が苦笑すると、トウキは開きかけた口を閉じた。まだ納得してないのかも。
「私ね、結婚しないって決めてるの。一生独身貴族を謳歌するんだ。」
ふふん、と笑うと、何故かトウキは奇妙なモノを見るような顔をする。
失礼な。
「何言ってんだ、お前。」
「いいじゃん、何にも囚われることない自由を満喫するんだから。」
「…胸張れる事じゃないからな。」
呆れ顔されても気にしないもんね。
「だからさ、一生友達でいよ!」
私は手を差し出すと、トウキは一瞬悲しげに眉が下がった。
けれども目を閉じて一呼吸おくと、いつもの勝気な瞳が開いた。
「しょうがねぇな、友達でいてやるよ。」
そう言って、私の手をきゅっと握る。
だから私も握り返して一度軽く振る。
ごめん、ちょっとツラい選択だよね。
でも、これが私の正直な想い。
叶えてくれて…ありがとう、トウキ…。
私が手を離すとトウキも離した。
「じゃ、また会う日まで。」
「おう。」
私はにっと笑って手を振ると、振り返る事なくその場を後にした。