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もう一度、を叶えるために。first

第3章 私が今、出来る事



とにかく、この手紙を読んで聞かせてみようと、自身の中にいる九尾に語りかける。

「九尾、起きてる?あなたに手紙よ。」

それを聞いた九尾は、ギロリとクシナを睨みつけた。

「ふざけ事を抜かすな。俺に手紙だと?そんな馬鹿がどこにいる。」

けれども、実際にこうして届いているのだ。
九尾に届けたいと願うなら、その願いを叶えてやりたい。

「読むわよ。」

「聞いてるのか!?」

クシナは九尾の殺気を受け流し、手紙を読み始めた。


クシナは読み終わり、九尾を見上げる。
知らん顔で、寝たふりでもするかと思われたのに、最後までしっかりと聞いていた。
そして、何に驚いているのか、目を丸く見開いている。

「…おい。どこでその名を聞いた?」

クシナはそこで確信を得る。

「…あんた、”クラマ”って名前だったのね。」

「うるせぇ!!その名を口にするんじゃねぇ!!」

余程癇に障ったのか、いつもの比ではない殺気が向けられる。
クシナは九尾を抑える為の鎖を出した。

「落ち着くってばね!」

「糞忌々しい…!どいつもこいつも…!」

鎖が巻き付けられた九尾の目は、憎しみの籠った瞳だ。
クシナは少し寂しく思った。

「あんたに名前があるなんて、初めて知ったってばね…。」

この手紙からは、まるで一人の人間に宛てた様な誠意が感じられる。
とても九尾に宛てたとは思えない位に。
反対に自分はどうだろう、とクシナは考える。
一番近くにいるのに、話そうとも、寄り添おうともしなかった。

「お前達人間に、名でなど呼ばれたくはないわ!!虫唾が走る!!」

…これが、九尾との距離だ。
一番近くて、一番遠い存在…。
クシナの胸に少しの痛みが通り抜けた。

「…心配しなくても二度と呼ばないから。」

クシナはそう言うと、精神の空間から意識を切り離した。


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