第3章 私が今、出来る事
「人と同じ様に話せて、考える事が出来る。なら、話して分かってもらう事だって出来るかもしれない、って思ったんだけど…。」
そう言って、エニシは残念そうに俯く。
シスイには考えつかない事だった。
九尾に言葉を伝えようなどと、誰が想像出来ただろう。
それとも、絵巻物を見て知っているエニシだからこその考え方なのだろうか。
「前世で見たってのも伊達じゃないかもな。」
シスイは少し笑いながら呟いた。
エニシはそれを聞いて、驚いた様に顔を上げた。
「え?信じてなかったの?」
「半信半疑だった。」
「…それでよく話を進められたね。」
この間、問い詰めた事を言っているのだろう、とシスイは理解する。
「まぁ、これから起こり得る未来、ってんなら聞いておく価値はあると思っただけさ。」
「私、よく通報されなかったな…。」
エニシは唖然とシスイを見る。
シスイの対応如何では、それもあり得た未来だっただろう。
少なくとも、病院には連れて行かれてたかもしれない。