第3章 私が今、出来る事
「…念のため聞くが…。これ、誰に渡すつもりなんだ?」
「クシナさんに渡して、クシナさんからクラマさんへ渡してもらおうと思って…。」
シスイはそれを聞いて深い深いため息をつく。
「あれ…?ダメだった…?」
「クシナさんに渡すんなら、あの人だってこれ読むよな。この内容はダメだろ。」
「え、内緒で渡して貰えば?」
「…九尾に実態があるのかよ。」
「あ。」
エニシはそこまで考えが回っていなかったようだ。
シスイは最早呆れるしかない。
「…お前、馬鹿だろ。」
少し考えれば分かる事である。
九尾は人柱力に封印された尾獣である。
厳重な封印の中にある為、決して表には出て来られない。
「そもそも、何でこんなの書こうと思ったんだよ。」
シスイはため息をつきながらエニシに問いかける。
エニシは少しムッとしながら視線を下げた。
「…だってさ、クラマさんさえ暴れなきゃ丸く収まりそうな話じゃん。
閉じ込められて鬱憤が溜まってるのかもしれないけど、出てきても暴れないって分かれば、みんなだって少しは見方を変えるかもしれないしさ。」
「…今更だけど、クラマって何だ?」
「九尾の狐さんの名前。六道仙人様からそう言う名前を貰ってる。」
シスイは目を見開いた。
「それも物語で見たのか?」
「うん。他の尾獣達も名前あるよ。忘れたけど。」
シスイは驚いた。
九尾に、人の様に名前があるなんて思いもしなかった。
化け物は化け物という感覚しかなかった。